清水寺の大改修

筆者は建築が好きで、不動産屋さんのスタッフをしているように思われますが、偶然です。たまには、不動産屋さんらしく地価と建築についてブログを書こうと思います。しかし、ただ単に調べたことを羅列するより、明日使えるトリビアと言うか小噺に使えるような話題を書いてみたいと思います。

今、京都の清水寺では平成の大改修が進んでいます。筆者は、京都の中でも京都らしさが残る清水寺周辺が大好きです。
京阪電車の祇園四条から円山公園、八坂神社、二寧坂、三寧坂、ねねの道、高台寺、清水寺に抜ける。このエリアがとても情緒が残り素晴らしい。しかし、今では外国人観光客が多く、冬に浴衣で観光するなど日本らしさがどんどん無くなり、日本人の「京都離れ」が加速してます。反面、インバウンドのお陰で、地価の上昇ナンバー1は京都の伏見稲荷大社前になりました。
今後、京都の地価どのように変動するかは、その後、日本の地価を見る上でも大きく参考になると思います。

清水寺と言えば、清水の舞台が有名です。昔、清水寺を訪れた時に、疑問に思いました。江戸時代に再建されてる清水の舞台。シロアリなどの柱の腐食がなくとても状態がいい。不思議に思って口に出したら、観光していたオジイサンが声をかけてきてくれて、答えを教えてくれた。「ヒノキだからよ」
この時は、とても感心したものだけど、少し疑問に思った。例えヒノキの木なら300年ぐらいたっても、ほんの微かに独特な匂いが残るものだけどそれがなかった。(筆者は臭気自判定士並みの臭覚があります。中国茶の炒青緑茶を審評した時に、その微かな甘い油の匂いが分かる程に鋭いです。)

そして、平成の大改修で分かったことがあります。柱は、ケヤキでした。樹齢400年近いケヤキの柱が使われていました。しかし、ヒノキでも無いのに、やはり状態が非常に良いのには変わりません。
この秘密も平成の大改修で分かりました。古人の知恵と匠の職人技によって、腐食しにくい工夫がされてました。

今、清水寺に行っても、どこもここも改修で見劣りするように感じますが、清水寺は100年から300年の周期で大改修しています。改修の様子や改修で分かった新発見などを生で勉強するには今の時期しかないと捉えれば幸運にも思います。筆者もこれがなければ、ヒノキと思い込んだまま終わったかもしれません。

され、清水の舞台には、何本のケヤキの柱が使われているか?ご存じでしょうか?
答えは、78本です。この柱を大改修の時に、1本1本検査して、耐久性があるか調べました。交換の必要がある柱は、たった9本でした。
この9本の柱さえ、腐食の進行は礎石に接する面の近くのみで、柱の補修も礎石近くのみを部分的な交換で済みました。
ケヤキが腐食しない秘密は、どこにあるか?
それは礎石が接する面の柱のケヤキを「十」文字に切り込みを入れることで、通気性を確保して腐敗を防いでました。
次の大改修に向けて、清水寺では京都の山に植樹をしてます。ケヤキの木を3000本、400年後に大改修に使われる木材を育ててます。

清水の舞台は、山の斜面に造られてます。このような斜面に建築物を建てる方法を「懸造」(かけつくり)と言います。斜面に沿って、柱の長さを調整して建物は水平になるように造られます。また、強度を保つために横の棟を組み合わせてます。

さて、清水の舞台と言えば「清水の舞台から飛び降りる」と言う言葉をよく聞くと思います。
この舞台の高さは、なんと13mです。建物で言えば4階ぐらいの高さから飛び降りるの同じ高さです。
昔の人はゲン担ぎで願いを込めて、飛び降りました。また、飛び降りると願いが叶うと信じられていました。

そして、清水寺には、その記録が残ってます。飛び降りが禁止なっても飛び降りる人は後を絶ちませんでした。
何より驚いたのは、飛び降りた人の生還率です。85%の人が命を失わずに済みました。どれだけの人の願いが叶ったかまでは記録に残ってませんが、助かった人は記録に残っているようです。

最後に、ケヤキ(欅)について
現在ではいかにケヤキが貴重か伝えたいと思います。大きなお屋敷に伺うとケヤキの一枚テーブルがあったり、文化財に登録されるような建物だとケヤキの一枚板の床の間や框(カマチ)に使われていることがあります。一枚板のテーブルで何十万としますから、樹齢400年のケヤキの柱がいかに貴重で高価なものか分かると思います。
普通は建築に携わったり、家を触る仕事していると、なんとなく知っていものです。
今から数年前の筆者の祖父の出来事です。筆者の祖父は今から40年以上前に家を建てる際に、材料を全て自分で買い付けて、その材料で金沢の大工さんに家を建ててもらいました。
その中には、天井に張るケヤキの一枚板がありました。そして、時は流れて祖父が年老いて、セキュリティーや介護の機械を設置することになりました。何も知らないもしくは、興味がないのか、情報がないのか、若い電気屋さんは、一枚板にトントントントンと釘を打ち、祖父の怒りを買ってました。
今の新木本住宅では、お仕事を大工さんにしてもらうことも多いですが、ベテランの大工さんなので、家主さんも知らないような逸品を使っている場合は、事前に声をかけることが多いと他のスタッフに教えてもらいました。
欅は巨木に育つ特性があり、巨大樹に育った欅が火山活動などで土に埋もれて、1000年以上たって発掘される欅もあります。こちらの欅は神代欅(ジンダイケヤキ)と言われ、さらに希少性が高い木材になっています。一枚板のテーブルはもちろん、将棋の駒箱や囲碁の碁笥として高価な工芸品として利用されています。